技術コラム
材質によるガンドリル加工の違い
ガンドリル加工とは
ガンドリル加工とは、ガンドリルという小径・深穴加工用のドリルを用いた穴あけ加工のことで、深くて細い穴を精密にあけるために開発された加工技術です。高精度と高速性から、現在では自動車や航空宇宙産業など多様な分野で高い精度が求められるシリンダーやシャフト、スピンドルといった機械部品などの加工にも採用されています。
ガンドリル加工は、小さな止まり穴や長い貫通穴など、通常の穴あけ加工では難しい深穴を効果的に加工することができます。特に、切り屑の排出性が良好で、加工面が滑らかに仕上がるため、精密加工が必要な部品製造に適しています。また、標準のマシニングセンタに装着することも可能で、汎用性が高いのも大きな特長です。
ガンドリル加工に使用可能な材料と特性
ガンドリル加工に用いられる様々な材質にはそれぞれ特性があり、適用場面や加工法に応じて選ばれます。以下に、主要な材質の特性と適用場面、および他の材質との違いをまとめてみました。
- 炭素鋼（SS400、S10C～S75C）:
- 特性: 高い靭性と機械加工性を持つ。加工が容易で、コスト効率が高いため、一般的な機械部品や構造材に広く使用されます。しかし、高い硬度や耐熱性を要求される用途には向いていません。
- 適用: 一般的な機械部品や建築材料。
- 違い: 合金鋼に比べると硬度や耐熱性は劣るが、加工しやすくコストも低い。
- 合金鋼（SCM415, SCM440など）:
- 特性: 添加元素により硬度、強度が増す。特定の添加元素（クロム、モリブデンなど）により、硬度、強度、耐摩耗性が向上します。これにより、耐久性が要求される自動車部品や工具に適していますが、加工難易度が上がり、コストも増加します。
- 適用: 自動車部品や工具など耐久性が要求される用途。
- 違い: ステンレス鋼よりは加工が容易だが、炭素鋼に比べて加工が難しくコストも高い。
- ステンレス鋼（SUS304, SUS316など）:
- 特性: 優れた耐食性と耐熱性を持つ。
- 適用: 医療器具や食品加工機器。
- 違い: 耐食性では他の材質を上回るが、加工時の難易度とコストが高い。
- 鋳鉄（FC250、FCD400）:
- 特性: 高い振動吸収性を持つが、衝撃に弱い。
- 適用: エンジンブロックや機械部品。
- 違い: アルミ合金に比べて重く、衝撃に弱いが、コストは低い。
- アルミ合金（A5052, A7075など）:
- 特性: 軽量で耐蝕性と加工性が高い。
- 適用: 航空宇宙や自動車産業。
- 違い: 鋳鉄より軽く加工性が高いが、耐摩耗性では劣る。
- 耐熱鋼（チタン、インコネル）:
- 特性: 非常に高い耐熱性と耐腐食性。
- 適用: 航空機のエンジン部品や化学プラント。
- 違い: 銅やプラスチックに比べて非常に高価で加工が困難。
- 銅（C1100など）:
- 特性: 高い電気伝導性を持つ。
- 適用: 電子部品や電気配線。
- 違い: 他の金属に比べて軟らかく、熱伝導性も高いが、耐摩耗性は低い。
- プラスチック（アクリル、PEEKなど）:
- 特性: 軽量で任意の形状に加工が容易。
- 適用: 電気絶縁部品や軽量構造部品。
- 違い: 金属に比べて強度や耐熱性は
SCM415を使ったガンドリル加工事例
こちらは産業機械業界向けに製作した専用機械の軸です。 材質がSCM415、外径φ205、材料長さ630の素材に穴径φ27にて貫通加工しております。 今回は穴加工及び外形の荒加工、素材端面の取付用ネジ穴の加工を対応し、 残りの仕上げ加工はお客様にて対応されます。
BTA・ガンドリル加工.COMでは旋盤加工ではやりにくい素材端面のタップ加工も 横型マシニングセンターを保有しているので対応可能です。 BTA・ガンドリル加工.COMにてあらかじめ端面の加工を行って納入させて頂くことで、 お客様は旋盤での外形加工のみ対応すればよく、工程、工期短縮が実現します。
また、SCM415はクロムモリブデン鋼（いわゆる「クロモリ」）の中で最も炭素含有量が低い材質となります。 そのため熱処理は浸炭熱処理を行うのが一般的で、表面の硬度と耐摩耗性を向上させつつ、 中心部の靭性を保つことが可能です。 そのため適度な「しなり」があり、振動を吸収するような場合の使用に適しています。。
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